ツイてる。俺はツイテいる。
誰よりも。『三銃士』の誰よりも、っていうか人類の中でもかなり上位のツキ具合だろう。
何がツイテるのかって?聞きたいのか。そうか。
帝劇の稽古場のフロアに自動販売機があってな、いわゆる、お金を入れると点々々がクルクルクルっと廻る当たり付きの販売機だ。街にもよくあるだろ、誰も当たったことがないあれ。
帝劇に16年勤務している音響さんも「入社以来、稽古場の販売機で当たった現場をマジで一度も見たことがない」と言っていた。
もうお分かりかと思うが、わたくし石井一孝が見事に当てました!!!帝劇100年の歴史の中で多分3人くらいしかいない「黄金の当選者」は私だ!
130円を投入し、どのボタンを押すか少し考えた後、柔らかな親指の腹で気怠くさりげなく「アップルジュース」のボタンをプッシュした。ゴトンという音と共に、アップルのボトルが逆さまになって取り出し口にダイブしてきたその瞬間、時が止まった....。
「ピ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
スロットマシーンのような4桁の数字に「0000」が並んでいた。俺の目は大きく見開かれ、瞳孔は開きかけていた。しかしそんな状況でも俺は見逃さなかった。
数字の並びは「7777」ではなく間違いなく「0000」だった。
「あれ、これ当たったんじゃない?」
どうしていいか分からず、某事務所の敏腕女子マネージャーさんに質問する俺。
「カズさん、早く押さないと取り消しになるよ」という声が返って来た。え、そうなの?こんな重大な歴史的快挙が急がないと取り消しになるの?
普段は沈着冷静な俺だがさすがにこの時は慌てた。
火事場の馬鹿力というのはこういうことを言うのかもしれない。渾身のパワーと、目にも止まらぬ俊敏さを右手の親指にこめてボタンを押した。早押しクイズでも優勝するほどの実力だった。
「ゴトゴトン」
鈍い音をたてて2本目のペットボトルがダイブしてきた。
「アップルジュース」だった。
何故だ?何故ほかのジュースにしなかったのだ?同じ味で2本はきついだろ!落ち着いて考えれば分かることなのに...。
でも、3秒で気を取り直し、湧き上がる喜びと実力の笑顔でキャスト全員に報告したのは言うまでもない。驚きの顔と轟く歓声に包まれる俺。43年の人生であれほどの賞賛を受けたことはそうない。俺はツイている。
問題はツキを使い果たしてしまったかもしれないことだ。
初日まであと4日。アラミスにもツキが残っていますように...。
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